映画『ほどなく、お別れです。』を観て、心に残ったのは派手な場面ではなく、静かな安心感でした。
遺族がほっとして「この人に任せよう」と思える空気をつくっていたこと。
そこでふと疑問が浮かびます。
この記事では、納棺師の「仕事」と「役割」を分けて考えながら、その理由を探してみます。
納棺師の仕事とは
納棺師の仕事は、亡くなった方の身支度を整え、最期の時間を穏やかに迎えられるようにお手伝いすることです。

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納棺の流れ(一般的なイメージ)
現場や地域、葬儀社によって違いはありますが、多くの場合は次のような流れで進みます。
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ご遺族へのあいさつと、段取りの説明
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身の回りの確認(服装・宗教的配慮・ご家族の希望など)
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身支度を整える(清め、髪、顔まわり、衣服)
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ご家族が立ち会う時間をつくる
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納棺(棺へお納めする)
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最後の確認と、静かな声かけ
「作業」として見れば工程はあります。けれど、納棺師の腕が出るのは、工程そのものというより所作の丁寧さとご遺族の気持ちの扱い方です。
「表情を整える」とは、どういうこと?
映画のように一言で「表情を整える」と言っても、想像がつきにくいですよね。
ここは、誤解のない範囲で具体的にすると、納棺師の仕事の重みが伝わります。
表情を整えるとは、乱暴に言えば「顔を別人に変える」ことではなく、その人らしさが感じられるように、見える印象を整えることです。
たとえば、こんな配慮が重なります。
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髪型を生前の雰囲気に近づける(分け目、前髪、整え方)
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乾燥しやすい部分の保湿をして、肌の印象をやわらげる
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お顔の汚れを丁寧に拭き、血色が悪く見えにくいように整える
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眉や口元など、表情に影響する部分を乱れのない状態にする
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必要に応じて、薄化粧で“きつく見える” “疲れて見える”印象をやわらげる
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ご本人の好みを反映する(普段の口紅の色、眉の雰囲気など)
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宗教やご家族の希望に合わせ、やりすぎない自然さを守る
そして、ここが一番大事。
納棺師は、表情だけを見ているのではありません。
だから、技術と同じくらい必要なのが、「今は説明を短く」「今は静かに待つ」「今は言葉を添える」この判断です。
納棺師は、こんな大変なことも引き受けている
納棺師の仕事は、きれいな場面だけではありません。
映画では多くを語られなくても、現実では心身の負担が大きい場面にも向き合っています。
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ご遺族が動揺している中でも、場を落ち着かせる
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たくさんの希望を聞きながら、時間の制約とも折り合いをつける
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故人の状態に合わせて、その場で最適な整え方を判断する
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感情を受け止めながら、自分は崩れないように立ち続ける
ここは、マニュアルだけでは身につきません。
現場の経験を積みながら、少しずつ「任せてもらえる人」になっていく部分です。
納棺師の役割は「作業」では終わらない

納棺師の仕事は“何をするか”で説明できます。
でも役割は、“なぜその人が必要か”です。
納棺師がいることで、遺族は「やらなきゃいけないこと」から少し離れて、見送る側としての時間を持てるようになります。
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触れていいのか分からない
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どう声をかけたらいいのか分からない
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何をしたらいいのか分からない
そんなとき、納棺師が間をつくり、言葉を整え、手順を示してくれる。
納棺師は本当に必要?
「家族だけでできるのでは?」という疑問は自然です。
でも現実には、家族だけでは抱えきれない瞬間が確かにあります。
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悲しみで判断ができない
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手を動かす余裕がない
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失礼があったらどうしようと不安
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ちゃんと送れたと思える形を残したい
必要かどうかは人それぞれ。
それでも「いてくれてよかった」と感じる場面があるなら、
その仕事は、もう役割を果たしているのだと思います。
まとめ
納棺師の仕事は、工程として説明できる。
でも納棺師の役割は、終わったあとに「そういうことだったのか」と気づく。
映画『ほどなく、お別れです。』をきっかけに生まれるなぜ必要なのかという理由探しは、
見送る側の心を整える時間でもあります。

引用元:X
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